真山 青果まやま せいか

　本名・彬。仙台生まれ。明治３６年に上京し、小説家を志して小栗風葉の門下に入る。注目された最初の小説は４０年、仙台帰郷中に仕上げた『南小泉村』で、貧農の生活描写に方言の忠実な投入を試みた。同年、風葉の転居を追う形で下戸塚に住むが、その翌年から小説家時代幕引きにつながる原稿二重売り事件を２回引き起こし、結果文壇から激しい非難を浴びる。牛込榎町に暮らした４４年、戯曲『第一人者』が初演されるものの、苦境に立たされ、本牧での雌伏期に入る。更に、妻を胸部疾患で亡くす不幸も経験するが、俳優喜多村緑郎の勧誘を受け、新派の座付き作家として再出発する。牛込矢来町にて、亭々生の筆名で執筆しながら、新派以外の脚本も書き、戯曲活動を広げる。大正１３年に『玄朴と長英』を発表。反響を呼び独自の劇作術を樹立して『平将門』『小判拾壱両』といった歴史劇分野を開拓した。以後約６０編におよぶ戯曲を発表し、歴史劇から三味線音楽の伴奏に頼る方法を取り除き、セリフの新しいリズムを誕生させた。