武田 麟太郎たけだ りんたろう

　大阪府に生まれる。少年時代から永井荷風などを愛読し、旧制第三高等学校在学中に土井逸雄・清水真澄らと同人誌「真昼」を発行。東京帝国大学文学部仏文学科に進学し、同人誌「辻馬車」に加わる。東京柳島の東京帝大セツルメントに住み込んで活動するなど、左翼活動に従事し、昭和２年大学を除籍される。４年「文芸春秋」に短編「暴力」を執筆してプロレタリア新人作家とし出発する。のちに、大阪生まれの井原西鶴に学んだ創作方法により、都市の底辺に生きる人々を描く「市井事もの」とよばれる独自のジャンルを切りひらく。
　昭和８年、林房雄、川端康成、小林秀雄らと「文学界」創刊に関わり、１１年には「人民文庫」を創刊し主宰したが発禁となる。主な著作に『日本三文オペラ』『銀座八丁』『一の酉』がある。